牧師メッセージ

2019年クリスマス・イヴ賛美礼拝メッセージ「別の道」

更新日: 2020.02.07

   神戸栄光教会創立134年 クリスマス・イヴ賛美礼拝メッセージ 「別の道」

聖書:マタイによる福音書2章7~12節  牧師:野田和人

 皆さんはクリスマスの降誕劇(ページェント)をご覧になったことはあるでしょうか。キリスト教主義の幼稚園や学校、そして教会では、この時期、礼拝や祝会の中で必ず上演することになっているものですが、主な登場人物のヨセフとマリア、天使と羊飼いたち、ローマ兵や星の役の子どもたちに加えて、最後に満を持して登場するのが東方の三人の博士たちです。

羊飼いたちと博士たちは、それぞれルカによる福音書とマタイによる福音書にある別々のお話が一緒になったもので、ルカによる福音書の特徴は、「宿屋にはヨセフたちの泊まる場所がなかった」ので、赤ん坊のイエスさまは家畜小屋の飼い葉桶の中に寝かされたということ、そしてこの救い主誕生の喜びの訪れを最初に知らされたのが、夜通し羊の群れの番をしていた野の羊飼いたちだったというところにあります。世界で最初のクリスマスは、権力者たちのいる豪華な宮殿や町のにぎやかさの中にではなく、粗末でひっそりとした家畜小屋で、当時誰からも相手にされなかった野の羊飼いたちの中に起こりました。

マタイによる福音書はどうだったかと言いますと、黄金、乳香、没薬を携えた博士たちの登場は確かにきらびやかに映るかもしれませんが、彼らが東方からやって来たというところに大きな意味があります。救い主の誕生に最初に気づいたのは、そのことについて膨大で正確な知識を持っていたユダヤの宗教的指導者ではなく、全くの異邦人、外国人である東方の学者たちだったというわけです。そう、世界で最初のクリスマスは、ここでも私たちが思ってもみなかった所から起こってきました。

思ってもみなかった所からということでは、ヨハネによる福音書のクリスマス物語を見ても分かります。ルカの「飼い葉桶の赤ん坊」は、何か私たちにたいへん近いものを感じさせますが、イエスさまは何も階段をトントントンと何段か降りて私たちの間に来られたわけではありません。そのことを第四福音書記者はこんな風に語っています。「初めに言があった。言は神と共にあった。言の内に命があった。命は人間を照らす光であった。光は闇の中で輝いている。闇は光を理解しなかった-これには、闇は光を取り押さえることができなかったという翻訳もあります。そして言は肉となって私たちの間に宿られた」。イエスさまが光で、闇は私たちと私たちの世界のことです。そして、闇が光を取り押さえることができなかったという言い方から、私たち闇の全く思ってもみなかった所から光が現れ出てきたということがよく伝わってきます。この、思ってもみなかった所から現れ出てくる光について、博士たちの声に耳を傾けてみましょう。

「私たちは空の星を研究する学者です。もう何年も何年も夜空を見上げ、星ばかり観察してきました。何日か前の晩から、西の方の空に不思議な星が光り始めました。仲間たちは、何か災いを告げる星だ、何の意味もないつまらない星だ、いや、新しい世界の始まりを告げる星だと言うのですが、いくらみんなで議論してもまとまらないので、もっとよく観察するために、私は西の地方に行ってみるつもりです。今までこの部屋を離れたことは一度もなかったのですが、今度は行ってみるつもりです。一体何が発見できるのか、まだ分かりません。長い長い旅になるような気がします。」

自分たちの生活の場を離れ、命がけの長旅の後に到着したベツレヘムの小さな家で、彼ら東方の学者たちはユダヤ人の王の誕生を心から祝い、小さく、何の力もない赤ん坊を前に黄金、乳香、没薬をささげて、最初で最高の礼拝をささげたのでした。ユダヤ人の王の誕生で自分たちのパクス・ロマーナ(力で支配する平和)が脅かされることだけを心配し、受け入れると見せかけてそれをなかったことにしようとした、ヘロデ王や彼に従ったエルサレムの人たちとは全く対照的です。

世界で最初のクリスマスに登場する羊飼いたちと東方の学者たち。私たちはここに救い主の誕生という喜びの知らせ、福音の拡がりを見ることができます。そしてそれはこんな風に言うことができるでしょう。「すでに受け、あるいはこれから受けるべきあらゆる神の恵みよりも大切なことは、貧しい者、謙虚なもの、蔑まれている者たちこそを自らの友として選ばれた神の御旨と誉れを愛することであり、それがすべてです。」

東方の博士たちはベツレヘムの小さな家の幼子の上に止まった星の下で、私たちの間の一番低い所に来られたこの驚くべきへりくだりの神に出会ったからこそ、ヘロデ王の宮殿を目指すことなく、もと来た道ではなく、別の道を通って帰っていったのです。もと来た道は、彼らを互いに憎しみ合うことからくる絶望と破壊へと導く道であり、別の道は、彼らを互いに助け合うことからくる希望と新しい創造へと導く道です。福音はこの別の道を通って、時には船に乗って全世界へと拡がり、この極東の地にも届きました。

クリスマスおめでとうございます。

 

神さま、主の年2019年のクリスマスから再び始まる新しい年、私たちが東方の博士たちと共に、もと来た道-力で支配する平和を装うもと来た道ではなく、すべての人を敬意と尊厳とをもって受け入れる、あなたの平和の道へと繋がる別の道を確信をもって進んでいくことができますよう、私たちを励まし導いてください。世界のすべての人たちの上に、私たちの飼い葉桶の主イエス・キリストのクリスマスの祝福が豊かにありますように。主イエス・キリストの御名によって祈ります。
アーメン。

 

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