牧師メッセージ

2023年6月4日(日)聖霊降臨節第2主日礼拝説教「小さくて、大きな物語」 

更新日: 2023.07.19

2023年聖霊降臨節第2主日 礼拝説教「小さくて、大きな物語」 牧師 佐藤成美

出エジプト記19章4節-8節 ルカによる福音書10章21節-22節 使徒言行録2章22節-24節

昔、神学部の教授に「『歴史的である』とは、どういうことですか」と聞いたことがあります。するとその先生はこう答えました。「歴史的とは、人間の生きている時間や空間の中で起こったことを指して言うのだ」と。

そう考えますと、そもそも聖書に記された神様に関わる出来事は、「歴史的」には確認できない「超歴史的」なお話、つまり「神話」であることが分かります。

今日の使徒言行録は、ペトロによるイエス・キリストの証しです。しかし、歴史的な観点でこの証しを見直してみるならば、わたしたちはナザレのイエスという人物について、歴史的な記述がほとんど残されていないことに気づかされるのです。

つまり、ペトロが証するようなイエスによる数々の不思議と奇跡の業や、そのイエスが十字架で殺され、神様の力で復活したという出来事は、歴史には確認できない「小さな」お話に過ぎないのです。

だけれども、そのイエスの十字架の死と復活に出会った人々にとっては、それは決定的な出来事でした。彼ら・彼女らはそこで、人間の思いをはるかに超えた神様の働きに出会うという「大きな」物語を経験したのです。

だからまた、その経験をした人々が心を込めて語るその証しが、多くの人々の心を動かして、多くの人々がそれを信じ、受け入れるようになったのです。

イエスはこのように言われました。「天地の主である父よ、あなたをほめたたえます。これらのことを知恵ある者や賢い者に隠して、幼子(のような者)にお示しになりました。」

誰が神の出来事を信じ受け取るのか、それは「幼子」です。ルターは言いました。「理性は信仰の最大の障害物である」と。

ですからわたしたちも、信仰においては「幼子」となって、小さくて大きな神様の救いの物語を信じ、受け入れる者でありましょう。

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